髪質改善に潜む、模倣と誤解
“独自の髪質改善”に潜む落とし穴 〜本物を見抜く目を持っていますか?〜
「髪質改善」や「オリジナルストレート」といった言葉、最近よく目にしませんか? SNSやホットペッパーでも「独自の技術です」「このエリアで唯一のメニューです」といったキャッチコピーが溢れています。
でも、美容師としての経験から率直にお伝えしたいことがあります。
その“独自性”、本当に“独自”ですか? 今回は、現場目線で見てきた「独自性の落とし穴」について、少し踏み込んでお話しします。
髪質改善ブームの裏で起きていること
「髪質改善」は、もともと美容業界に正式な定義があるメニューではありません。
つまり、どんな施術をしていても「髪質改善」と名乗れてしまう、ある意味とても“自由な言葉”です。
そして最近では、「〇〇式トリートメント」や「◯◯オイルストレート」など、特別感のあるネーミングと共に**“当店だけのオリジナル施術”をうたうお店**も増えてきました。
でも実際には、
- 他のサロンとまったく同じカウンセリングを受けた
- 施術後に渡される紙が別の店と同じフォーマットだった
- 薬剤や工程が固定されていて、髪の状態に応じた調整はなし
というケースも少なくありません。
それでも「うちだけの独自技術」として堂々と発信されているのが現状です。
■ “独自”の正体はテンプレート?
「〇〇(地域名)で唯一のオイルストレート」
「当店だけのオリジナル髪質改善技術」
そんなふうに“特別感”を前面に出している美容室、最近増えてきています。
でも、実際にいろんなお客様の話を聞いていると、「あれ? 前に行った別のサロンと、まったく同じ説明だった」 といわれるケース、実はすごく多いんです。
たとえば──
- カウンセリングでのトーク内容や流れがほぼ一言一句同じ
- 施術後に渡されたアフターケアの用紙が別のサロンで受け取ったものと全く同じフォーマットだった
- 使用する薬剤も、髪の状態や希望にかかわらず毎回同じ組み合わせ
「このケア方法が最適です」と言われたけど、SNSに載っている施術事例はどれも同じ工程で同じ結果 。
つまり、“独自性”を打ち出しているはずなのに、中身はどこかのサロンや講習会の内容を模倣して、名称だけ変えて提供している場合があるのです。
模倣された“独自性”の裏事情
では、なぜこういった模倣や誇張が起きるのでしょうか?
実は、美容業界には「○○導入講習セット」というものが存在し、 薬剤・カウンセリング内容・印刷物・説明トークまですべてパッケージ化されたキットが販売されています。
セミナーなどに参加すると、そのサロンが実際に使ってるマニュアルや資料が配布されるため、それをそのまま流用しているサロンがほとんど。
これを導入すれば、すぐに「新メニュー」として打ち出せるため、 経験が浅くても誰でもある程度“それっぽく”施術ができてしまうんです。
そしてそのテンプレートをベースに、名前だけを変えて「当店オリジナル」とうたってしまえば、あっという間に“独自メニュー”の完成。
でも、それは本当に“あなたの髪のために考えられたメニュー”なんでしょうか?
髪質改善=くせが伸びる?それ、誤解です
ここでもうひとつ、よくある誤解について触れておきます。
「髪質改善をしたら、くせがまっすぐになるんですよね?」
実際、そう説明しているサロンもありますが、正確には違います。
くせを“物理的に伸ばす”ためには、還元剤を使った縮毛矯正が必要です。
一方で、髪質改善トリートメントは主に補修や手触り改善が目的。
くせそのものを変える力はありません。
(※酸熱トリートメントなどで多少まとまりやすくなることはありますが、持続は数週間程度です)
知らずに「くせがなくなる」と期待して髪質改善を受けたのに、何も変わらなかった…。
そんながっかり体験をされた方、実は少なくないんです。
“本物の技術”は、こうして見極める
誇張やネーミングに惑わされず、“信頼できる美容師”を見つけるには、以下のようなポイントに注目してみてください。
- 薬剤の仕組みや目的をしっかり説明してくれるか → 具体的な成分や効果の持続性について話してくれる人は信頼できます。
- 髪の状態や履歴を丁寧に聞き取ってくれるか
→ カラーや矯正歴などを無視して施術するのは非常にリスキーです。
- できないことを正直に伝えてくれるか
→ 「やれますよ」しか言わない美容師よりも、「それは今の状態では難しい」と伝えてくれる人を選んで。
- その場だけでなく、数ヶ月先の髪の状態まで考えているか
→ 被膜系のコーティングでツヤだけ出しても、1ヶ月後にバサバサになっていたら意味がありません。
- 公式認定や実績の有無 →特定の技術や薬剤についてメーカー公式の認定制度がある場合、公式に認められたサロンかどうかを確認してみましょう。
例えばオイルストレート技術では、2023年現在全国約350の導入サロンの中から技術力の高い店舗が**「認定サロン」**として公開されています。認定サロンであれば公式サイト等に掲載があるはずですが、そうでないのに「唯一できる」「公式」「認定」と謳っているサロンも実際とても多くあります。
私が大切にしていること
私自身、どの施術でもトリートメントは内部補修が基本です。
髪の表面をきれいに見せるだけの“その場しのぎ”ではなく、根本からケアしていくことを大切にしています。
また、カウンセリングでは「どうなりたいか」だけでなく、「なぜそうなりたいと思ったのか」まで伺うようにしています。
そこまで理解することで、ようやく“本当に必要な提案”ができると感じているからです。
もし「できない」と判断すれば、無理に施術をすすめることはしません。
それは、あなたの髪を“未来ごと”預かっているという意識があるからです。
最後に:独自性は“にじみ出るもの”
「うちだけの技術です」と言っても、それが他店と同じマニュアルだったら、 それは“独自”とは言えませんよね。
本当の独自性とは、“発信の言葉”ではなく、“施術の姿勢”ににじみ出るもの。
そしてそれは、あなた自身が「なんか、ここは信頼できる」と感じる空気にも表れているはずです。
あなたの髪を、長く大切にしてくれる美容師と出会えますように。
そして、その判断のヒントになれたら嬉しいです。
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