“早い=正しい”じゃない。時短縮毛矯正が抱えるリスクと、私が選ばない理由。
最近、「縮毛矯正はどれくらい時間がかかりますか?」と聞かれることが増えました。
予約の前に「●時間以上かかるのは厳しい」と相談されることもあります。
忙しい現代、なるべく短時間で済ませたいという気持ちは、よくわかります。
お客様が日々の生活の中で効率を求めたくなるのは当然です。
でもそれでも、私ははっきり伝えたい。
“早い=上手”とは限らないし、むしろ“早さの裏側”にはリスクが潜んでいる。
いわゆる“時短縮毛矯正”は、施術時間を短くするために、 何かしらの工程や判断を“削る”ことで成立しています。
例えば、放置時間を極端に短縮するために
- 高pH・高濃度の薬剤を使ったり
- アイロンの操作を最低限に済ませてしまったり
- 酸化処理をオキシではなくカラー剤で兼ねてしまったり
“早く終わる”ことは、確かに可能です。
だけど、そうやって省略された工程の“しわ寄せ”は、確実に髪に蓄積していきます。
せっかく時代が変わっていい薬剤が出てきているのに、また10年前の矯正に逆戻りしている気がします。
還元がムラになれば、くせが伸びきらない。
酸化が不十分なら、髪内部が固定されず、時間とともにバサつきやすくなる。
アイロンの温度や圧が適切でなければ、毛先は硬くなり、扱いづらくなる。
施術直後の仕上がりは、一見「綺麗」に見えるかもしれません。
でも私は、その髪の“1年後”や“2年後”をたくさん見てきました。
時短矯正を繰り返した髪の毛先は、
・まとまらない
・乾かない
・広がる
・枝毛、切れ毛、ゴワつきが出る
という形で“答え”が出ます。
しかも厄介なのは、それが「急に起こる」のではなく、 “じわじわ”と表面化していくこと。
本人も、最初は「年齢のせいかな?」「最近パサついてきたかも?」と原因に気づかない。
速さを求めること自体を否定するつもりはありません。
時間がない人もいるし、そこに応える美容師さんがいるのも知っています。
でも、速さを選ぶ=リスクを受け入れるということ。
その認識なしに「髪が綺麗にならない」と嘆くのは、正直、お門違いだと思う。
私が“あえて”時間をかけるのは、 無駄にゆっくりやっているからではありません。
その人の髪の履歴を見て、質感を触って、 必要な時間を「削らない」と決めているからです。
例えば、放置時間が5分短くなるだけで薬剤の作用が変わってしまう髪もある。
アイロン1パネルの角度や圧、立ち位置ひとつで、髪の落ち方やまとまりが変わる。
酸化の工程を雑にしたら、それは1年後の質感に確実に響いてくる。
それをすべて理解したうえで、“あえて手間をかける”。
それが、私の中での「本当の意味での髪質改善」です。
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髪を綺麗にするって、魔法みたいに一瞬で叶うものじゃない。
今だけじゃなく、“未来の髪”に向けて積み重ねていくもの。
時短=悪ではない。
でも、時間を短縮することで失うものがあることを、ちゃんと知っていてほしい。
私のサロンでは、その時間を“守る”スタイルを選んでいます。
だから、速さを優先したい方には合わないかもしれません。
でも、今だけじゃなく“1年後も綺麗な髪でいたい”と本気で思っている方には、 きっと響く施術ができると信じています。
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